神奈川県公立高校入試 面接シート講座<中学校生活&長所編>
「合唱コンクールでは、はじめはクラスがバラバラでしたが最後には一致団結してよい合唱ができました」
「委員会では委員長としてみんなをまとめました」
などのありがちな話、おそらく面接官はあなたの出番の前に既に何十回と聞いていることでしょう。
- 委員会の決められた仕事でも、それを「私」がするとどうなるか。
- クラスをまとめるにあたり、どんな困難や衝突があったか。そのとき「私」はどうそれを克服したか。
具体的な出来事を思い出し、「私」と「私に関わった人々」を登場人物とするドラマを描きます。
主人公はもちろん「私」です。
そうすることで、ありがちな話をオンリーワンのエピソードに高めることができます。
安心してください。
経験上、受験生はひとり残らず、大人を感動させるエピソードを持っています。
それでは、実際に受験生が書いた面接シートの文章をひきつつ、私からのツッコミと何度かのやりとりを経ての最終的な完成版を紹介していきます。
ケース①
「私は物事に集中して取り組むことができます」
初稿
私のよいところは、物事に集中して取り組むことができることです。部活動では、朝練習や放課後に集中して取り組むことができました。その結果、県大会に出場し、優勝することができました。
ツッコミ
集中して取り組むだけで県大会優勝できるでしょうか。もっと具体的に、どんな頑張りがその素晴らしい結果につながったのか、考えてみましょう。
完成版
私のよいところは、物事に集中して取り組むことができることです。部活動ではテニス部に所属し、毎日の朝練習や放課後に集中して取り組んできました。自分の苦手なプレーや試合でしてしまったミスなどは、顧問の先生にアドバイスを頂きながら改善する努力をしました。その結果、公立県大会に出場し、優勝することができました。
ケース②
「部長としてチームをまとめました」
初稿
中学校では3年間テニス部に所属し、部長としてチームをまとめ区大会では優勝することができました。この経験を生かし、また新たな目標を見つけ、高校でもダンスや様々なことを頑張っていきたいと思っています。
ツッコミ
全国数万人の部長が部員をまとめています。部長がそれをするのは普通です。「あなたが」部長としてチームをまとめるのに苦労した点、それでもなぜあきらめなかったのか、どんな工夫をしたのか。あなたならではのエピソードを思い出してみましょう。
完成版
私は、苦しいことも諦めずにやり遂げれば大きな喜びに変わることを信じ、全力を尽くすことができます。部長を務めた中学校のテニス部では、不安だらけの1年生に対しては積極的に声をかけ、もめごとの多かった2年生に対しては1人1人の話をよく聴くなど、持ち前の明るさと行動力で出来る限り多くコミュニケーションをとることを心がけました。チームを盛り上げ、自らも強い選手でなければならない部長という役割の責任の重さにくじけそうになったこともありましたが、引退のときに後輩から沢山の感謝の言葉をもらい、苦しかったことが、最高に嬉しいことに変わる瞬間の喜びを感じました。
ケース③
「リーダーシップを発揮しました」
初稿
私は責任をもって行動することができます。1年生の頃から生徒会本部に所属し、学校の運営に取り組んできました。2年生からは会長となり、与えられた仕事をこなすだけでなく、役員に対しリーダーシップをとることができました。
ツッコミ
生徒会長がリーダーシップを発揮すること自体は珍しいことではありません。どんな場面でどのようにリーダーシップを発揮したのでしょうか?
完成版
私は責任をもって行動することができます。1年生の頃から生徒会本部に所属し、学校の運営に取り組んできました。2年生からは会長となり、自分の意見を積極的に述べ、役員一人一人の意見に耳を傾けてコミュニケーションを密にとり、リーダーシップをとることができました。
ケース④
「友人を大切にします」
初稿
私の長所は、友達との関係を大切にすることです。私はこの長所を生かして、貴校での部活動や文化祭などの行事において、友達と協力し合って良い思い出を作っていきたいです。」
ツッコミ
友達との関係を大切にする人はあなただけではないでしょう。具体的に、友人関係を大切にするという気持ちからあなたがとった行動、それにより起こった変化や思いなどを、出来事を思い出しながら考えてみてください。
完成版
私の長所は、誰よりも友人関係を大切にしようとすることです。中学1年生のときに私がいじめにあっていたとき、周りの人はそれを見ているだけでした。でも、唯一友達だけはそれを止めようとしてくれました。そのとき私は、「友達というのは自分を支えてくれるかけがえのない存在なんだ。他の誰よりも大切に思っていきたいな」と思いました。それ以来、私は誰よりも友人関係を大切にする心を忘れていません。
大人の方へ
冒頭に書いたように、受験生はひとり残らず素晴らしいエピソードをその内に秘めています。しかしひとりではうまく思い出せなかったり、その素晴らしさに気づけなかったりします。
「あなたのよいところは何ですか」
という質問に対してその場で答えるということは、大人にとっても簡単なことではありません。照れくささと自分に対する過小評価があるからです。
もしも面接シート作りで困っていることをサポートする場面があったならば、紙とペンを置いて問いかけてあげてください。ツッコミから完成版の間にはこのやりとりが必ず介在しています。
たとえば教科活動・教科外活動(部活・行事・委員会)などの中学校生活についてであれば、それぞれのテーマについて
「いちばんうれしいことはなんだった?」
「いちばんくやしいことはなんだった?」
「いちばん苦労したことはなんだった?」
「どうやってそれを乗り越えたの?」
「どんな工夫をしたの?」
「あなただけがしていたことはある?」
「どうしてそんなに諦めなかったの?」
みたいな感じで。
大人側が「もっとあなたのことについて知りたい」という気持ちで臨んでください。
そうすると、ぽろりぽろりと、心に響くフレーズが出てきます。
それを見逃さずにつかまえて、それをオウム返しで言ってみたり書き留めたりして「すばらしいね!」って伝えてあげてください。
改めて子どもたちの素晴らしさを知り、抱きしめたくなるほど愛おしくなるような、そんな素敵な機会になるはずです。
参考になれば幸いです。
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