事業者も保護者も一緒に読めます。小学生募集についての構造と戦略。

とある町にぽつんと1つあるだけの弊スクールですが、「社会・世界に繋がる大きな窓を備えた教室でありたい」という想いから様々な分野の方にご助力いただき、あれこれ取り組んでそれを発信してきたところ、今では多くの方に活動をフォローしていただけるようになりました。とてもありがたいことです。


同業の方からも「話を聞かせてほしい」とよくご連絡をいただくのですが、最近は特に小・中学生を指導されている方からのキッズコースについてのお問い合わせが多いです。


こういうお問い合わせからお会いしてお話をする流れだと「質問に答える」という感じになるので、相手の関心や想像力によって内容が上下左右にブレます。


ぶっちゃけた話、これをストレスに感じることも少なくありません。「あーもっと別に話したいことあるんだけどな」とか思ったりするのです。


そこで、今日はここで私の考える「中学生が主体の個人塾における小学生募集についての構造と戦略」について思う存分にぶわーっと書こうと思います。


自らクソほど失敗を重ねてきた上での論考でありその意味で失敗のシェアでもありますので、同業者の皆様におかれましては何卒生温かい目で見ていただければ幸いです。


また、私は子どもたちや保護者からセンセイなどと呼ばれていますが、しょぼいケイエイ者でもあります。以下ケイエイ視点の記述が多いですが、最後までお読みいただければ、保護者の方におかれましても、「ああコイツもバカなりに考えてやってるんだな」と理解してもらえると思います。


子どもたちにとってよい居場所が増えてほしいと、私なりに真剣に考えています。

では始めます。


弊スクールには小学生と中学生が通ってくれています。高校受験指導を行う一方で中学受験指導は行なっていないのですが、小学生が中学生よりもたくさん通ってくれています。


単価も人数も比率が大きい中3の卒業が近づいてくると「はああ」とため息が出るのが高校受験を出口とする塾のよくある年度末なのですが、その心配は比較的少なく済みそうです。


人数構成について、学習塾というのは出口付近の学年の割合が多い(少子高齢化のような)逆ピラミッドになりがちです。この構造になると中3が卒業するたびに収支が悪化して暗い気持ちになります。


ここを継続的に確かな形でクリアする戦略のないままに「今年調子いいぞ」なんつって社員増やしたり増床移転したりして固定費を大きくすると死ぬことがあります。


※私はばっちり死にかけました。


さて、ここで考えたいのが「家計の投資動機」です。


基本的に人生のどこかの段階で受験が不可避な日本においては、学齢が上がりそれが近づくにつれ家庭における受験への対応の「緊急性」が増していきます。「緊急性」が高まると投資動機が高まるので、体験・入会などの行動が起こりやすくなります。その結果最も緊急性と投資動機の高い中3が多くなるのです。


ちなみに授業料に関して、高学年のそれは緊急性と投資動機が高いので「高くしても大丈夫」ということにもなります。たまに話題になる中学受験塾の6年生の超高い授業料・講習費とかがそれです。「◯◯対策特別講座」みたいなオプション講座も増えます。


要するに誘拐犯が身代金を要求するのと同じです。

子どもとその将来を人質にとって高いお金を請求するわけですから。


このあたりは消費者としてはきちんと見抜く目をもちたいところです。


ところで中学受験の学習範囲、特に理社は小学校6年分だけではなくて中学生の公民や物理などの範囲の出題もあるので実質は6+3=9年分。学校別の対策も必要になってくるのでこれらをまとめて小6の1年間だけで、というのは至難です。で「小4から本格的に」という複数年継続型の投資動機が形成されます。


中学受験も高校受験も取り扱うことのできる学習塾は投資動機の高い2つの商品をもっていることになるので、経営的にも強いはずです。指導力がきちんとあり、ネット・チラシ・口コミなどでプロモーションの網を貼っておけば大丈夫。


ですが、今回テーマとしている「中学生を主体とする個人塾」の講師がこれをやるのはきっと難しいでしょう。というのも、まず高校受験指導を生業としてきた人間の多く、特に大手出身の講師というのは、私も含めてですが、学力的に中途半端なのです。


この「中途半端」というのは、学習塾では中学校や高校のような1教科専任制とは違って複数科目を指導することが通常になっているというところから生じる課題ともいえます。


高校受験塾の先生は文系2科目または理系2科目の指導ができるという人が多いと思いますが、中学受験は最大4科目でかつそれぞれに専門性が必要です。また中学生に指導するのと小学生に指導するのは全く別物でありこの経験も簡単には補えませんし、これに加えて学校や進路戦略についての知識も備えなければなりません。


高校受験を主体としている個人塾が中学受験または大学受験に手を伸ばそうとするということは、会社をもう1つ作るのと同じくらい大変なことだと思っておくぐらいがちょうどよいと思っています。


リソース(教務力+人材)不足から中学受験や大学受験へと事業拡大することが困難な中学生を主体とする個人塾は、映像授業をはじめとするICT教材を導入したり、学生講師を雇用して「個別指導」または「集団と個別のハイブリッド」、みたいな仕組みづくりをすることになります。


弊スクールでも活用していますし、うまくやれば経営的にも教務的にも効果的なものです。では仮にこのような仕組みを整えた上であれば中学受験をサービスとして搭載可能かというと、それがうまくいくかどうかは結局そのスクールの指導責任者が中学受験(教務内容+進路戦略)にも精通しているかどうかに、つまり個人のマンパワーにかかっています。


というのも、この仕組みを構成する人材の多くはパートタイム講師であり、彼らが教務と進路戦略の両方に精通しているということはほぼないからです。


そして先に述べた通り、中学生を主体とする個人塾の指導責任者が高校受験と中学受験の教務内容と進路戦略の両方に精通するケースは少ないため、結局こういったスクールの小学生コースは仕組みを整えたとしても結局は公立中学進学に向けて基礎学力を身につけておく補習塾になりがちです。


緊急性と投資動機の高い中学受験塾に対して、小学生の補習塾はそのどちらもが曖昧なので集客は伸びにくいです。そして逆ピラミッド型の学年人数構成が決定的になります。


実はこの曖昧さは、そのスクールの、もっといえばそのスクールの経営者の考える「小学生コースの位置付け」の曖昧さがそのままに表れているものといえます。これは仕組みだけでは解決できません。そのスクールが「小学生の身につけるべき基礎」どのように定義づけているかにより、質と内容は大きく変わってきます。


この曖昧さと向き合わないままにプログラミングや子ども英語などの外部サービスを導入して肉付けを図るケースがありますが、これは経営的緊急性を動機としてしまっているので顧客の利益とは関係がなく、それゆえサービスの提供理由が対外的に言語化できないので、結局ここでも曖昧さが生じてしまいます。


骨格の弱いところに無理に外部サービスを導入しても期待したほど集客はできず、加盟料やロイヤリティを相殺しながらの運営は結局コストの方が高くつき継続動機が低下していきます。多くの学習塾で英語やプログラミングの提供に躊躇があるのは現場の先生方がこれを予感していらっしゃるからでしょう。


ちなみに私は多動でアホなので「おんもしろそう!」でレゴのプログラミングを(カリキュラム開発から)始めましたが1年で潰してしまいました。今は2年かけて戦略を立て直し別の教材でリベンジを始めています。

ここまで、中学生を主体とする個人塾において


「小学生コースは現場のリソース不足から公立中進学準備のための補習塾になりがちでそのニーズは中学受験に比べ緊急性が低いので投資動機も低くなり集客が伸びず結果として逆ピラミッドの学年人数構成になりがち」


という話をしてきました。


それではいよいよ「じゃあ小学生コースにどのように取り組むのか」というお話です。


小学生のお子さんをもつご家庭のニーズはざっくり


志望校合格などの目標がありその達成のため学力強化したい

❷日々の勉強に前向きに楽しく取り組んでほしい

❸つきっきりで過ごしてきたがそろそろ仕事を開始・再開したいのでその間子どもに安全・安心な場所で過ごしてほしい


の3つに分かれます。


では、この3つのニーズをこれまで述べてきた「緊急性」の順に並べた場合、どのような順番になるでしょうか。


❶の緊急性は4年生以降強く高まり6年生時点でのそれは3つの中で最高になるでしょう。

❷は緊急性とは違う性格のもの。”mandatory(無いと困る)”というよりは”nice to have(あったらいいな)”に近い。

❸はお仕事をしたい保護者にとってはその間のお子さんの安全に関わるので緊急性は高くなります。就業のタイミングを「小学生にあがったら」とするケースは多いので、低学年段階から緊急性が高くなります。「1人でお留守番できるか」という観点からも低学年の段階での対応が必要になることがわかります。


❶の志望校が中学校の場合は中学受験塾に通うでしょう。中学生を主体とする個人塾でここ受け入れようとすると、畑違いの教務指導と進路指導を補うため当然にたくさんの勉強とそれに割く時間が必要となりますから、他の業務が圧迫されます。


仮に「1、2人だけなら」と「特別に」受けることにしたとして、先生が高校受験も見ながら全力を尽くし、中学受験でも成果を出された場合、次にはきっと「うちもお願いします」と新しい方が門をたたくことでしょう。


先に述べたように「会社をもう1つ作る」くらいの覚悟と見通しがあるならよいのですが、個人のマンパワーでなし崩してきに引き受け続けてしまうと必ずどこかで破綻します。


もちろん、これを高いレベルで継続的にやり遂げてしまう先生もいらっしゃるというこは承知しています。超すごいです。でも、やはり圧倒的に少数派でありみんなにできることではありません。


個人塾の先生というのは「少数派のニーズ」にも応えたくなってしまう性分の人が多いと思います。見捨てるようで、断ることが苦手な先生が。そもそも「出会う子どもたち全てを幸せにしたい」というのが起業の動機だったりすることが多い。自分で言うのもアレですが、私も情がわいてしまう方です。


でもリソース不足でこれをやるのはやはり危険です。


志望校合格などの目標がありその達成のため学力強化したい

❷日々の勉強に前向きに楽しく取り組んでほしい

❸つきっきりで過ごしてきたがそろそろ仕事を開始・再開したいのでその間子どもに安全・安心な場所で過ごしてほしい


ここで私は、❶に手を出さず❸に注目して❷に沿うコンテンツ群を編むことにしました。


1−3年生は❷❸がそのまま当てはまります。そして4年生では高学年になり心も身体も成長するので❸の緊急性が低下し、かわりに❶がその目標を「中学進学後の勉強」「高校入試」へと形を変えてその緊急性を緩やかに高めていきます。


なので弊スクールでは「たのしい高校入試説明会」という企画を1-2ヶ月に1度くらいのペースで開催して高校入試へのイメージを持ってもらうようにしています。そして6年生では「中学英数準備講座」を実施しています。


緊急性の高まるタイミングを見計らうことで、高校受験で培った経験とノウハウを小学生に対しても訴求力のあるコンテンツとして提供することができるのです。

ここまで分析的に述べてきましたが、実はきっかけはある小学生の一言でした。授業が6時に終わって、何気なく「家帰って何するん?」と尋ねたら「親帰ってくるまで誰もいないからテレビみる」と答えたのです。「何時頃帰ってくる?」と尋ねたら「21時過ぎ」と。「それまでメシは?」と尋ねたら「ない」と。


それはちょうど「一億総活躍」とかいわれてた時期で、私はそんなニュースをその男の子のことを思い起こしながらぼんやりと見聞きしていました。そして「大人たちが活躍するのはいい。でもその間子どもは誰がみるんだ???」と思いました。


私が「緊急性」という言葉を用いたのは本当に「ヤバい」と思ったからなのです。


キャリアにしろ生活にしろ親が働く理由は尊重されるべきです。「子どもとの時間大切に」「家庭の教育力が低下してる」等の言説が存在することも理解はできますが、私は事業者として親の人生をサポートし子供を責任もって預かる仕事に取り組むことにしました。それが以上の論考とそれに至るクソほどの失敗の始まりです。


親も子供も生き生きと成長できる世の中を目指し、私たちもできる努力をしていきたいなと思っています。


おしまい。


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